鱸@エンタメブログ

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遠距離恋愛で心が離れる理由についてのマーケティング的解説

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友人が転職をして大阪に行くことになりました。新天地で頑張ってもらいたいと思います。(公私ともに!)

 

で、思い出したのですが昔やっていたブログで「遠距離恋愛は続かない」というのを書いていて、かなりの検索から流入があったのでニーズがあったのか?と思い、再度書いてみることにしました。

 

遠距離恋愛で心が離れる理由についてのマーケティング的解説

 

遠距離恋愛で検索すると以下の記事がTOPにきていました。遠距離恋愛のゴールを結婚においた場合、ゴール達成した人の割合が16%というものです。

 

www.skygate.co.jp

これを「16%も」と見るか「16%しか」と見るかは見る人によってだいぶ違うと思います。ただ、このアンケートは「遠距離恋愛に関するアンケート」として実施されたみたいですので、遠距離恋愛をした人のうち16%であるなら、通常付き合っている人も合わせて考えるとあまり成功確率の高い恋愛だとは言えないようです。

 

遠距離恋愛で別れる理由としては

  1. 相手が信じられなくなる

  2. 寂しさに耐えられない

  3. 会えない(連絡頻度が減る)

が上位にくるのではないでしょうか。この3つもはっきりとセパレートな理由ではなく、”会えないから寂しい”とか”連絡頻度が減って相手が信じられなくなる”という風に複合的になるかと思います。

 

では、この3つをもう少しサイエンス的にというか、理論的、マーケティングに説明できないのでしょうか?

 

できます!!

 

遠距離恋愛で心が離れてしまう理由は、「単純接触効果」「社会的交換理論」で説明することができます。

 

では、「単純接触効果」から行きましょう。

 

単純接触効果(たんじゅんせっしょくこうか、英: mere exposure effect)は、(閾下であっても)繰り返し接すると好意度や印象が高まるという効果。1968年、アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスが論文 Zajonc (1968) にまとめ、知られるようになったWikipediaより引用>

 

初めのうちは興味がなかったり、苦手だったりしたものも、何度も見たり、聞いたりすると、次第によい感情が起こるようになってくる、という効果。たとえば、よく会う人や、何度も聞いている音楽は、好きになっていく。これは、見たり聞いたりすることで作られる潜在記憶が、印象評価に誤って帰属されるという、知覚的流暢性誤帰属説(misattribution of perceptual fluency)で説明されている。また、潜在学習や概念形成といったはたらきもかかわっているとされる。 <Wikipediaより引用>

 

接触する回数が増えると、それについての興味や関心、好意度があがっていくという感情の仕組みです。企業がテレビCMを大量に出稿するのはこのためです。逆に言えば、大量に出稿できないのであれば、テレビCMは打つべきではありません。

これは恋愛でも同じで、これまでいっぱい会えていたのに、遠距離恋愛になって会う頻度が減れば、接触効果が足りず興味や関心、好意度がだんだん下がっていってしまいます。

 

なら、毎日電話して、いっぱいLINEすれば大丈夫じゃん

 

と思いますよね。その話は後回しにして、次の説明に行きたいと思います。

 

社会的交換理論(しゃかいてきこうかんりろん、英: social exchange theory)とは、社会学の一領域。「交換」という観点から社会のあり方を解きほぐそうとする試みである。この立場を取る研究者にはピーター・ブラウ、ジョージ・ホーマンズが有名。

 

へ?何?ってなりますよね。説明します。

 

人はいろんなものを交換して生活しています。経済活動は「経済的交換」と呼ばれます。「ケーキを500円で買う」「新幹線のチケットを15000円で買う」のような、「商品、サービス」を「お金」を通じて交換している活動のことです。

人が交換している”モノ”は「財やサービス」だけではありませんよね。「楽しさ」や「愛情」「幸せ」も相手と交換していたりしますよね。そういった”人の社会生活における相互作用”のことを「社会的交換」と呼びます。

 

社会的交換は定量的には測れません。「あなたの楽しさは何円ですか?」「この幸せはいくらですか?」と聞かれても、なかなか答えられるものではありませんよね?

もちろん、100億円ですとか2000兆ドルですと答える人がいるかもしれませんが、他人から納得感を得られるかは難しいところです。

 

遠距離恋愛に話を戻すと、その「幸せ」を得るのにいくらかかりますか?ということがでてきます。この”いくら”にはお金もそうですが、時間も含まれてきます。

 

???

 

という方もいるかもしれませんね。でも、次に進みますね。大丈夫です。読んでいけばわかると思います。

 

そして、この単純接触効果と社会的交換理論を組み合わせます。抽象化した話では分かりくいので、例を示して説明します。

 

この10月からダイスケさんは大阪に転勤になり、彼女のサトミさんとは東京-大阪間での遠距離恋愛になってしまいました。ダイスケさんは毎週末に東京に新幹線でサトミさんに会いにくることを約束し、毎日LINEで連絡を取り合うことにしました。

 

二人が会うことで得られる幸せ(=効用値と言い換えます)は100で、新幹線の往復で5時間、交通費で3万円かかります。

 

ダイスケさんとサトミさんの東京-大阪間の遠距離恋愛を例に話を進めたいと思います。ここで男女が入れ替わっても、北海道-博多、ストックホルム-シンガポールでも同じです。

 

ダイスケさんとサトミさんは順調に遠距離恋愛を開始しました。ダイスケさんも大阪の生活にも新しい職場にも慣れはじめていました。大阪では同じチームのケイコさんが親切にいろいろなことを教えてくれています。

 

ダイスケさんはケイコさんに特別な感情はもっていませんが、効用値は毎日1ずつたまっていきます。

 

ケイコさんという新規の人が登場しました。2か月経った時の3人の関係を下図のようなグラフで表してみます。

 

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ダイスケさんがサトミさんと会うと100の効用値を得て、それが月4回積み上がていきます。またそのために1回2.5時間の往復と3万円の交通費を負担しています。

一方でケイコさんは週5日1の効用値を得ています。コストは0です。この感じであれば、ケイコさんは特に障害にもならず、ダイスケさんとサトミさんの恋愛は順調のようです。

 

3か月目に入った時、大事な仕事の関係でダイスケさんはサトミさんに会いに行くことができませんでした。努力の甲斐があってダイスケさんの仕事は大成功を収めましたが、ダイスケさんはチームと過ごす時間が増え、とケイコさんとの効用値も1日あたり3に増えてしまいました。また仕事の大成功のお祝い&打ち上げを兼ねてダイスケさんのチームは週末にBBQを実施し、その週もダイスケさんはサトミさんに会いに行けなくなりました。

 

ダイスケさんにうほ3か月経った時の3人の関係をグラフで表してみます。

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グラフに動きがありました。2週ダイスケさんが東京に帰れない間に、ケイコさんの効用値が上昇をはじめました。またBBQに行ったことで、さらにケイコさんの効用値に上昇がみられます。

 

で、それでもサトミさんの効用値の方が圧倒的に大きいので、毎週ダイスケさんが東京に帰れれば問題は置きません。でも、ここから聞いてくるのがコストと効用値の関係です。社会的交換理論の話です。

100の効用を得るためのコスト(ここでは5時間×3万円と単純化しています)です。

 

15 ÷ 100 = 0.15 コスト指数

 

になります。BBQ後は1日あたり5の効用値になっているケイコさんはコスト0です。

コスト指数も0です。(0÷5=0)。そうなると、ダイスケさんの中で変化が起こり始めます。コストが負担になってくるのです。そして、1回あたりの効用値が減少をはじめてしまいます。

 

ダイスケさんはサトミさんに早く会いたい、寂しい、なんで先月2回も来なかったのか!というLINEや電話をいっぱいもらいます。申し訳ないという気持ちが大半なのですが、仕事だったから仕方ないじゃんとか、こっちばっかり負担させないで自分から大阪にくればいいじゃん!とか思ったりします。週末に東京に行きサトミさんと会いましたが、どこか依然と違う感じを感じてしまったダイスケさんでした。

 

ダイスケさんのサトミさんへの効用値が85まで減少しました。

 

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ダイスケさんが3回東京に行くことで効用値に差は先月より開きましたが、コスト指数が上昇してきました。 

 

15 ÷ 85 = 1.764 コスト指数

 

効用値が減少してもコストは変わらないからです。コスト指数が上昇し始めると効用値が減少し、またコスト指数が上昇します。このスパイラルに陥るとどんどんと効用値が減少し続けます。

 

そうなるとダイスケさんの態度にもその様子がでてきて、サトミさんもダイスケさんの変化に気づき始めます。そうなるとだんだん不安になり相手が信じられなくなるという変化もサトミさんの方にも出始めます。

 

そのような状況が続く中、ケイコさんとの関係に何か進展があったとすると。。。

 

ダイスケさんとサトミさんは喧嘩をすることが増えてきました。今月も2回東京に行きましたが最後は喧嘩してダイスケさんが大阪に帰るということになりました。そんな中、ダイスケさんはケイコさんに恋愛相談に乗ってもらうことになり、仕事帰りに二人で飲みに行きました。

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 累積の効用値が減少し始めたサトミさんと急上昇のケイコさん。このまま進めば折れ線グラフは逆転することは時間の問題となります。

 

架空の設定でここまで書きましたが、単純接触効果というのは強いです。毎日会うというのはそれだけ強い効果を生み、それはマーケティングの1つ広告の分野で使わています。

また社会生活上の交換を説明する社会的交換理論遠距離恋愛で「会える=幸せ」にそのためのお金と時間が大きく作用することになります。

 

理論上は遠距離恋愛は成功しない確率が高いものと言わざるを得ません。でも、それを乗り越えて結婚する人たちも少なからずいます。

本ブログの趣旨は、「こういう説明ができる」のであれば、それを逆手にとってどういう打ち手があるのか考えて頂きたい、ということです。

 

彼を知り己を知れば百戦殆うからず

 

自分の性格がわかっていたら、遠距離恋愛になった時点で別れるとか、もう婚約してしまうとか、こういう戦いをすればいいのだとか準備ができるはずです。

 

長くなりましたので終わります。

需要があれば、関連の話も書いてみたいです。

 

では。