鱸@エンタメブログ

ドラマや映画、本やマンガの感想を中心に書いているブログ。マーケティングやビジネスよりのことは、こちらのnote に https://note.mu/copiz

2018年10月期 ドラマの総評 ”何故「今日から俺は‼」が人気だったのか?”

f:id:cpz_suzuki:20181218225342j:plain

 

ドラマの総評というタイトルですが、私がすべてを見て、感想を書いたドラマは3つだけなので、その3つについてだけ書きます。その3つとは、

 

 

です。それ以外については言及しません。また、これはあくまで私個人の感想なので、もちろん違う感想をお持ちの方もいると思いますが、予めご了承ください。

 

(思いの外、長文となってしまいました。ご注意ください。)

 

まず視聴率の推移から。

視聴率がすべてではないですが、やはり全部を同一の条件で見れるため、ひとつの目安になります。

f:id:cpz_suzuki:20181218232354p:plain

ちなみに今期の視聴率(平均)のTOP3は、「リーガルハイⅤ:15.6(確定)」「相棒 17:15.3(9話まで)」「 下町ロケット:13.2(10話まで)」(12/18日現在)となっています。

 

やはりこの結果がまんま、この3つのドラマの評価を示しているような気がします。平均こそ、「SUITS」が10.7今日から俺は‼」の9.9を上回っていますが、それは事前期待が高く、第1話が14.2と高い水準からスタートしていることによります。逆に前評判で絶対こけると言われていた「今日から俺は‼」は9.8とやや低いスタートからでした。

 

前評判と言えば「獣になれない私たち」はとても事前期待が高かったと思います。「逃げ恥」コンビ「新垣結衣野木亜紀子というのはネームバリューは抜群でした。途中第4話でクライマックスシーズンとぶつかり放送が1時間以上遅くなるという不運なことがありましたが、大勢には影響はなかったと思います。

 

では、前評判が高かった2つが評価をさげ、低かった「今日から俺は」が評価が伸びていったのでしょうか。前評判をざっくりまとめると以下の感じでしょうか。

 

SUITS

いわゆる月9。織田裕二鈴木保奈美が27年ぶりに共演という話題性。アメリカで人気ドラマであるSUITSのリメイク。SUITS出演のメーガン・マークルはイギリス ヘンリー王子と結婚という付帯話題あり。

 

獣になれない私たち

「逃げ恥」コンビ「新垣結衣野木亜紀子」。逃げ恥は最終回20%超えという大ヒットで社会現象にまでなった。今の時代の女性の声を代弁している感。共演の田中圭一は直前の「おっさんずラブ」で評価が高い。

 

今日から俺は

今の時代にツッパリ。ザ昭和の精神論の世界で、今の不合理、不条理を否定する時代とは全く合わない価値観。当時のヤンキーマンガとしても、ジャンプの「ろくでなしブルース」、マガジンの「特攻の拓」と比べても人気が1段落ちる。

 

 

さて、今の視聴者のテレビドラマを見る目は、どんどんと肥えてきていると思います。Hulu、Amazon PrimeNetflixなどの動画配信サービスの利用者がどんどん増えていて、海外ドラマなど気軽の楽しめる環境が進んでます。

海外ドラマは面白くなければ、すぐに打ち切り、面白ければシーズンを重ねて放映されます。その面白さは脚本にかかっています。脚本が面白いドラマは出演者が有名であれ、無名であれヒットし、そのヒットによって出演者が有名になっていくというのが普通です。

 

一方で、日本のドラマは伝統的にキャスティングが一番大事です。誰がキャストできるか?によってストーリーは変化します。そのため、誰が出演するかで前評判がかわります。もしかしたら話題づくりのための作り話かもしれませんが、SUITSの海老蔵の出演はドラマが放映されてから決定されたという話があります。これこそ、キャスト命という日本のドラマという感じです。

mdpr.jp

1話放送後、海老蔵さんが“SUITS/スーツ”のことをブログで触れていただいているのを発見したのが大きなきっかけでした。すごく光栄なことで、すぐにスタッフの間で騒然となり、“是非出ていただきたい!”となりました。せっかくならば自信を持ってオファーできる役にしたいという思いを持ち続け、虎視眈々とそのタイミングを狙っていました。最終回に向け物語的に大きな鍵を握る検事・澤田は、海老蔵さんをイメージして作った完全オリジナルキャラクターです。 

本当のところはわかりませんが、11話しかない1クールのドラマで、第1話を放送後にラスト2話の重要人物を完全オリジナルキャラとして出すのは脚本としてどうなのでしょうか?しかも、視聴率を見る限りそれほど貢献しているとも思えません。

 

 

「SUITS」、「獣になれない私たち」に共通したのは脚本がよくなかったということだと思います。「SUITS」がスカスカだったのに対し、「獣になれない私たち」はギュウギュウでした。

 

とにかく「SUITS」は話が繋がりませんでした。言っていることとやっていること、すごく重要なことのように本人が気にしている「偽弁護士」ということに対しても、扱われ方は軽いし、完全記憶能力なんておまけみたいなものだし、甲斐先生や鈴木先生の絡みも少なく、甲斐先生が指導している姿なんて全く描かれないのに二人の関係が深くなっているとかとかとか、言い出すとキリがないのですが、”溜め”の演技とかに時間を割いて感じなことに時間を割かない、いい風にとれば贅沢な時間の使い方をしているといえるでしょうが、単なる時間の無駄です。別に本家SUITSと比較したいわけではないですが、あちらはセリフ量が多い。単位時間あたり5倍くらいに圧縮して情報を詰めている。一方で、、、、と、比較を抜きにしても、物語のつながりとしてスカスカでした。なんであんなりあっさり遊星を許したんでしょうね?しかも、家宅侵入、恐喝などの不法行為をお願いして、「あんなの朝飯前だよ!」って一緒にご飯食べてるし。

月9は人気俳優と女優がでていれば、数字が取れるものである!というのがあるかもしれませんが、目が肥えてきた視聴者がついてこなかったのだと思います。

 

他方「獣になれない私たち」は主演ではない二人以外のストーリーに時間を割きすぎで、最後にテキトーに全員舐めてハッピーエンド!!ちゃんちゃん的にしか見えませんでした。一番はやはり京谷のお母さん、千春さんです。千春さん回は私も好きですが、あんなに時間を使う必要があったのでしょうか?

そのくせあっさりと旦那さんは死んで葬式まで終わるし、あの千春さんに触れたことで晶は何か影響を受けたのでしょうか?その変化はあまり見えませんでした。

 

たしかにガッキーは可愛かったです。無職になってからしていたマフラーはとてもかわいく、どうやって巻いているのか考えたりしたものです。でも、第1話で見る人がしんどくなるくらいに追いこんだあのリアリティはどこに行ったのでしょうか?あの第1話を乗り越えて2話、3話を見た人はそのリアリティを期待していたのではないでしょうか?たいして給与が良さそうにない九十九クリエイト。そこを辞めて無職になり、 失業保険で暮らしているのに、なんであんなに高そうな服を買えるのでしょうか?母親とは縁がきれているので、親からの仕送りもないはずです。

ガッキーは可愛いし、おしゃれじゃなきゃいけないのはわかりますが、そういうところでリアリティを無くしているのは、視聴者はきちんと認識しないまでも、どこかに違和感を感じてしまいます。映画「プラダを着た悪魔」では、最初からアンハサウェイはもちろん美人ですがダサい服装をしています。はじめはアンハサウェイが美人なので気が付かないのですが、ラストになると化粧も姿勢も服装も数段輝いて見えます。そこで、どれだけ彼女が成長したのか気が付きます。そういう細かい演出が必要なのだと思います。

 

そういう細かい演出を延々やり続けたのが「今日から俺は‼」だと思います。もちろん、上記2つとは違うギャグドラマですが、ストーリーがしっかりしているからこそ、そのギャグが生きるし、1クール通じて1つのドラマとして楽しめたわけです。「SUITS」なんてラスト2話別のドラマになったのか!と思うくらいトーンが変わりました。

 

ツッパリはやせ我慢です。面子です。暴力です。今の時代にうける要素がまったくありません。逃げればいいし、かかわらなければいいし、付き合いを辞めればいいという話にしかなりません。でも、そのツッパリが受けたのです。この時代に。

 

もちろん、ツッパリが受けたのではなく、ツッパリを下敷きにしてキャストそれぞれの魅力を引き出しながら、極上のエンターテインメントに仕上げたからだと思います。アドリブ全開なので、地上波の尺に合わない分を「未公開シーン復活版」としてHuluでながしたのも良かったです。むしろ、その要素が後半にかけてのドライブを生んだのだと思います。

【Hulu】今すぐ会員登録はこちら

 

同じドラマを2回楽しめる。そのことがわかり始めて、さらに楽しみの幅を広げていったのだと思います。それがギャグドラマとしてハマる演出だったのだと思います。そういうストーリーのフォーマットが大切で、例えば「SUITS」が副音声をやっていましたが、弁護士ドラマとして必要だったかと思えば私はいらない要素というか、寧ろ興をそがれる一因だったのでは?と思います。必然性がありません。

 

『SUITS/スーツ』田中将大が副音声で“月9”デビュー!中村アンと大盛り上がり 12・17最終回|TVLIFE web - テレビがもっと楽しくなる!

なかでも、田中選手が「東北楽天ゴールデンイーグルス」在籍中の2013年シーズンに唯一黒星を喫した11月2日の「日本シリーズ第6戦」(vs読売ジャイアンツ)を中村が球場で観戦していた話で盛り上がり、二人がお互いに好きな異性のタイプを語り合うひと幕も。

 

あの重苦しい最終回を見ながら、副音声でお互いの異性のタイプの話を聞いて楽しめるのでしょうか?もちろん、人の楽しみ方はそれぞれなので、好きな人はいるのでしょうが、純粋にドラマを楽しみたい人にはいらない要素だし、別のフォーマットでその話を流した方が、多くの人が喜べたのではないでしょうか?

 

余談ですが、昔パチンコの機種でゴルゴ13がありました。世界一のヒットマンです。100%依頼を完遂させる男です。でも、その男が1/330しか玉を当てられないのです。ゴルゴ13への冒涜だと思いました。

 

ますます日本人のドラマを見る目は厳しくなっていくと思います。地上波は完全には無理だと思いますが、キャストを中心としたドラマを作っていく限り、視聴者は離れていきますし(そもそも面白い海外ドラマは動画配信サービスの中にたくさんある)、必然性のないフォーマットを使っていると、さらに視聴者が離れていくと思います。

 

すごい長文になってしまい、また総評というよりは私の想いをぶちまける長文となってしまいましたが、これで終わりたいと思います。ドラマウォッチャーとしては、引き続き来年1月のドラマを楽しみに待ちたいと思います。